つくり方が変わってきているが、日本の学生はついてきているか?

名古屋市立大学の開学70周年のプレイベントとして11月23日(土)に開催された「コンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とその教育について考える −デジタル技術による『拡張現実』−」を聴講してきました。

少し時間が経ってしまったので、うろ覚えになっているところもありますが、大変刺激的な内容でしたので、少しでも記録に残しておきたいと考えています。ただし、下記文章にしている内容は必ずしも時系列ではなく、私が印象に残ったことをかいつまんでまとめています。ご容赦ください。

  • 講師
    • 杉田 宗:広島工業大学環境学部建築デザイン学科准教授
    • 井上 智博:FABLAB北加賀屋、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab
    • 東福 大輔:零三工作室主宰、名古屋市立大学非常勤講師

東福氏:磯崎新事務所所属の時に中国の案件で現地に滞在。案件が終わるときに事務所をやめて中国に残り自分で設計事務所を作って仕事をした。代表例として中国棋院のインテリアなどを手がける。その頃に杉田氏と出会い、ライノセラスのグラスホッパーで幾何学的、アルゴリズムに基づくモデリングができることを教えてもらい、取り組み始めて使えるようになった。

東福氏:笠寺観音(名古屋市南区)の再整備計画のコンペを獲得し、その建物の天井パネルに非周期充填形の三角形を用いている。その設計にグラスホッパーを用いている。その具体的な実務は名古屋市立大学の教え子で優秀な人が行った。

東福氏:倒立振り子に興味を持っていて、その機構を活かして建築的な傘形状のものを群制御できると面白いと考えている。制御用の基板や部材を中国から仕入れていろいろ試作機を作っている。

杉田氏:アメリカで学生時代を過ごし、その時にグラスホッパーを覚えた。アルゴリズムで作る建築を提案して作ってきている。

杉田氏:新しい建築としてのアウトプットだけでなく、これからの新しい働き方すなわち新しいプロセスも重要になってくる。南カリフォルニア建築大学では学生が設計したり発表したりする学ぶ空間そのものが観光客に開放されている。ロボット、3Dプリンター、ドローンなどで作る建築というものもある。

杉田氏:広島工業大学では1年生の後期で基本的なライノセラスを使った3Dモデリングの基礎とグラスホッパーを用いたパラメトリックモデリングを学ぶ。2年の前期でデジタル工作機械(3Dプリンターやレーザーカッターなど)を使い、実物として具現化する方法と機械の特性を活かしたデザインを学ぶ。2年の後期ではBIM特有の属性も持った3Dモデリングを理解しながら建築設計の基礎を学ぶ。

杉田氏:大学では一部の先生から反発もあったが、デジタルデザイン教育やBIMには力を入れている。最近はゼネコンのBIM推進部などに就職する学生もいる。

井上氏:FabLab北加賀屋は会員皆で運営を行っている。会員が良く使うものやこれから使いたい機械を導入するが、木工では精度よりも大きい部材を扱える機械を入れたりしている。その具体的な機種選定などをしている。

井上氏:縁あって京都工芸繊維大学のFabLabのような施設 KYOTO Design Labの機材運営管理の仕事をするようになった。この施設はプロダクトやテキスタイルなどのデザイン領域と建築領域が横断的に教育研究するところになる。プロジェクト駆動型で様々な分野、国内だけでなく海外の大学とも一緒に使っている。ハッカソン的な短期もあれば長期のものもあるが、年間60〜70のプロジェクトがある。

井上氏:KYOTO Design Labで導入する設備は、その分野で最先端の研究をより高められることを目的に選定する。機材やソフトウェアの使い方は、都度井上氏が個別に指導しているが、少し効率が悪いとは思っている。FabLab北加賀屋で機材を購入するときは精度よりも扱える素材の種類や大きさが重要になることが多い。

三者座談的に:日本の教育でデジタルデザインは遅れていると心配している。チューリッヒ工科大学の学生は、ライノセラス、グラスホッパーを使うのはもちろん、Pythonで解析したり最新の機材を使いこなしたりと、デジタル系を使いこなしている印象がある。アメリカでも中国でもデジタルを使いこなすのは当たり前で、日本の学生でも優秀な人は日本の企業に就職せずに海外に行ってしまう。

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