バウハウス100年映画祭 前世紀の全盛期

バウハウス開校100年を記念した展覧会と映画が全国を回っていますが、映画が名古屋で2020年1月11日から始まりましたので早速観てきました。

バウハウス映画祭 https://trenova.jp/bauhaus/

巡回展「きたれ、バウハウス」 http://www.bauhaus.ac/bauhaus100/exhibition

映画祭となっていますが、各地方の個性的で小さな映画館で期間をずらしながら上映されています。名古屋では名古屋シネマテークで上映され、4プログラムに分かれています。ほかで観る可能性が一番低いと思われる「バウハウス・スピリット」「バウハウスの女性たち」 のプログラムB を選びました。内容はとても面白く、私個人としては久しぶりの映画鑑賞を十分楽しめました。お金と時間を調整して全部観てもいいのですが、少し違和感が残っていることもあって、今のところ1プログラムのみにしています。

映画の内容そのものには満足しています。名古屋のひとつの個性的な映画館における体験ですので、いろいろ至らないことも多くあると思いますが、その違和感と少し書いてみたいと思います。最後は映画の内容についての感想です。

ドキュメンタリーは映画館で上映する形式で良いのか?

後世に影響を与えるような大きな出来事や社会現象、個人や団体の活動などを映像として残していくことには大きな意味があると思います。何が行われていたのか?当事者はどのように考えていたのか?周囲の人や社会にはどのような影響があったのか?などを、その出来事そのものの映像や当事者関係者へのインタビューなどを通じて知ることができます。これは興味持った人にとって、とても貴重な資料になり、いつでも確認できるようにしておきたいと考えるでしょう。

しかし、映画館だけで期間が決まっている状況では、場所や期間が合わなければ見ることができません。今回は各映画館で2週間程度、場所は主要都市のみになります。これでは観たい、調べたいと思う人にとってずいぶん不便ですし、映画を作った側も広まらない、お金にならないとなってしまうだけではないでしょうか。

今ならインターネットを通じて、映像をアップロードしておいて世界中から見ることができるサービス(YoutubeやVimeoなど)もあるし、自分でサーバーを借りて映像を置いてもいいでしょう。ネットサービスの広がりで状況が変わってきていますが、DVD・BDで販売、レンタルしてもいいでしょう。今ならネットサービスでもマネタイズの方法は増えてきているので、映画館上映方式にこだわらなくても良いように思います。

映画館は今の技術にあっているのか?

久しぶりに映画館に行きました。最近はネットサービスで映像作品を見る機会が増えており、小さな自分の部屋でも安くなった50型のモニターがあります。仕事や趣味の時間や場所を考えると、なかなか映画館へ行くことはなく、自宅で鑑賞するようになります。

小さな映画館ですので、特に画面が大きいわけではありません。没入感的には自宅と大きく変わらないように思います(心理的なものなので、スマホの画面でも没入できますが)。

音響は自宅よりはるかに良いでしょうが、ドキュメンタリーとしては自宅のスピーカーでも許容できます。

暗くて手元が見えません。私はすぐに記憶することが苦手なので、上映中に出てきた固有名詞などをメモしておきたいのですが、手元が暗くてメモが見えません。モニター技術が発展している現在、暗くしなければ見えにくくなる投影式の必要はあるのでしょうか。

皆で観ているので当然なのですが、興味を持ったところで止めたり、もう一度観ることができません。さかのぼって確認したい内容もあったりします。リアルタイムのスポーツ観戦でも、リプレイがあるように、重要な場面は2度見ることで理解できることもあります。エンターテイメントとしてのアクション映画などでは時間の流れを含めての作品でしょうが、ドキュメンタリーでは理解しながら鑑賞したいと思っています。

小さく個性的な映画館

映画が久しぶりすぎて、行く前は結構ドキドキしました。どこにあるかも知らず、映画館の入っている建物の常連さん向け具合からも、緊張して扉を開けましたが、スタッフもお客さんもおっとりした雰囲気で居心地の良い空間でした。

今回の映画以外の上映予定ポスターも多く貼ってありましたが、その内容にはこの映画館の考え方がよく表れていて、私の興味とも合っていたことも良かったのかもしれません。私の後に来た人は今日のプログラムは知らず、「この映画館で上映するものなら良いものでしょうから観ます」といった感じでお金を払っていました。

上映後にはゲストのトークショーがありました。私の回では豊田市美術館学芸員の千葉真智子さんのお話でした。バウハウスの女性を扱ったドキュメンタリーでしたので、女性の千葉さんのお話を聞けるのは良い流れになっていました。正直なところ、他の予定を無理してこじ開けて映画館に行ったのは、この上映最初の週末限定トークショーがあったからです。

小さく個性的だからこその価値もあるとは思うのですが、この状態を維持するのはなかなか難しいかもしれないと感じています。

バスハウスの映画の内容について

「バウハウス・スピリット」は直接バウハウスの功績を紹介するというよりも、バウハウスの影響を受けた人や組織が、世界中で新しいものを企画、設計していることを紹介しています。外観的にはバウハウスと直接わかるものはありませんが、その考え方の根底にバウハウスの考え方が続いていることを示しています。現代では学校の在り方も、都市における問題の解決の仕方もバウハウスの頃とは大きく違っていることが良くわかります。

「バウハウスの女性たち」では、現代では考えられない(某大学で問題になっているように)、女性の入学者数を意図的に低くしたり、入学できる学部を織物に限定にしたり、女性が先生になることを拒んだり給料を低くしたりと、相当に男社会だったことが紹介されています。

バウハウスも開校当時は相当に異端とみなされましたが、それは工業化の時代に合っていて、それが100年経ってスタンダードになりました。その根本にあるデザインにおける精神的なものや考え方は普遍的なことが多くあり、これからも重要であることは変わりません。100年経って、社会環境や自然環境、技術は大きく変わっているので、デザインに求められることも、そのための手法も当然ながら違ってきていることを、改めて認識させられるドキュメンタリーでした。

Bauhaus_Dessau

今回はバウハウスと映画館の100年の長さを感じると共に、これからどのように変わっていくのか改めて考えさせられます。

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